パーティー四人の名前を読んで彼は声を失った…

ある小学5年生の男の子が、持病が悪化したため、1ヶ月間入院する事になった。
病室は4人部屋で、その男の子の他に、おばあちゃんとおじいちゃん、もう一人は同い年くらいの女の子だった。
男の子は人見知りが激しい上にとても照れ屋で、なかなかその同室の人たちと仲良くなれず、一人で勉強しているかゲームボーイで遊んでいた。
家から持ってきたゲームはすでに一度クリアしたソフトだったが、ヒマなので毎日遊んでいた。
入院して一週間が立った頃、ゲームをやっていると同室の女の子がじーっとこちらを見ている事に気づいた。目が合うと女の子は慌てて逸らす。
「もしかしてやってみたいのかな?」そう思った男の子は「良かったらコレ借そうか?」と聞いてみた。
すると女の子は目を輝かせて、とても嬉しそうな表情を浮かべ「いいの?」と答えた。男の子はゲームを快く貸してあげた。
しかし案の定、女の子は操作が分からず、男の子が操作を教えながら一緒にゲームを進めることにした。
そのゲームは仲間(パーティー)をつくる設定になっていた。そこで、主人公に「たかし(男の子の名前)」、仲間に「ゆうこ(彼女の名前)」。他の仲間には、それぞれ同室のおばあちゃんとおじいちゃんの名前つけた。
それからどんどんその女の子と仲良くなり、二人でゲームボーイをやるだけではなく、色々な話をするようになった。
学校の事、家族の事、好きな音楽の事、近くに迫った夏休みの事…それからの時間はあっという間であった。
しかし、すぐに男の子が退院する時がやってきた。看護師や同室のおばあちゃんやおじいちゃんたちが口々に「おめでとう」と言ってくれる中、彼女だけが泣いていた。 それを見て、男の子も泣きそうになった。
しかしグッと堪えて「オマエが退院するまでコレ借してやるよ。退院したら連絡くれよな」と言って、男の子はゲームを置いていった。
それから何度もお見舞いに行こうと思ったが、いざ行こうと思うとなにか照れくさくて行けなかった。
連絡がないまま1年半が過ぎ、男の子も小学校を卒業する頃になった。せめて卒業前にもう1度会っておきたいと思い、意を決してお見舞に行く事にした。
病室に行ったが、彼女はいなかった。
病室の入口の名前欄にもない。もうとっくに退院したのかな?そう思い、ナースセンターで聞いてみる事にした。
「ゆうこちゃんは遠い所に行ったよ」などとうまくはぐらかされたが、彼ももう小学6年生。大体のことは把握できた。
その場の空気や、後ろの看護師さんが泣き出したのを見ても明らかだった。男の子がショックで呆然としてる中、その看護婦さんが、「ああ、そういえばゆうこちゃんから、たかし君が来たら渡しといてって言われた物があるのよ」 と言ってそれを渡してくれた。
借してあげたゲームだった。
男の子はそれを受けとって家に帰ると、夕飯も食べずに暗い自分の部屋でゲームの電源を入れた。
懐かしいあのオープニング音楽。それと一緒にでてくるロード画面。
一つは彼女と男の子が一緒にプレイしたデータ。あの時からほとんど変わっていない。
懐かしさと悲しさで胸がいっぱいになった。
その時、見た事のない一つのデータに気づいた。
やたらとレベルの低いデータだった。始めてすぐに飽きたか?と思い、そのデータをロードしてみた。
パーティー四人の名前を読んで彼は声を失った…
「かんごふ」
「さんにこ」
「ろされる」
「たすけて」・・・